第211回「交わる所」(2021/08/07 東京芸大1年 井澤岳丸)

初めまして。井澤岳丸と申します。
一年前の今頃は、オリンピック真っ只中の東京に自分が住んでいるなんて、想像もしていませんでした。
地方の田舎から出てきた者にとって、東京という場所はまさに混沌(カオス)。
人と、文化と、情報と、感情が激しく渦巻く大海の中に身を投じたという感覚です。
私は映画が大好きで、自分でも映画を撮ったりするのですが、脚本のことを考えながら夜の新宿を一人歩く時。

雑踏、雑踏。雑踏…………….

こんなご時世なので以前と比べれば勢いはないのかもしれませんが、沢山の人々が行き交う交差点の中で、ふと自分の心が立ち止まりたがるのです。(足は動き続けたまま)

僕の心はゆっくり人混みを見回します。
前へ。後ろへ。右へ。左へ。
それはまるで自分を今として出会い、別れていく
過去や未来のようです。
でも考えてみると、気付くのです。
その人にとっては、自分の向いている方向が「前」で、自分の生きている時間が「今」なんだと。
いつの間にか、僕は寮の廊下に立っています。
廊下の端から端まで、
行ったり来たり、行ったり来たり。
過去から今へ、今から過去へ。
「あっ」
ふと脚本のアイデアを思い付いた僕は自分の部屋に戻って行きます
バタン。
ドアの閉まる音。
おやすみなさい。